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Letter to my Father

by Naruko Kumasako

父ちゃんへ

 

 父ちゃん、今、私たちがインドで暮らしていると聞いたらきっとびっくりするでしょう。

そうです、私たち家族は、インドのムンバイ(旧ボンベイ)に住んでいます。子供たちもすっかり大きく、たくましくなりました。英語も話せるようになりました。父ちゃんが子供たちに最後に会ったのは、13年前、私たちがアメリカに住んでいた頃ですね。あの頃、彼らはたった2歳と4歳だったので、残念ながら父ちゃんの顔は今ではぼんやりとしか覚えてないそうです。

 

 2年前、子供たちは自ら、ここムンバイに行くことを決めました。私はその決断をとても嬉しく、誇らしく思います。最近、日本の若者は日本の外に出たがりません。それは日本にいる方が楽だからだと思います。日本はとてもきちんとしていて、平和な国ですから。でも、うちの子供たちは、インドで混乱も、貧困も、悲しみも、怒りも、そして幸せさえも見て、感じることができると信じています。

 

 私が子供の頃、父ちゃんは繰り返し私に言いました。沖縄はのんびりしていい所だけど、世界はとても広い。東京へ、できれば世界へ行きなさい。英語を話せるようになりなさい、と。小さな南の島で生まれ育った私は、15歳で上京を決意し、幸いにも結婚後は海外に住む機会を得ました。でも私はまだ覚えています。父ちゃんたちが、沖縄に自分たちの家を建てることを諦めて、私たちのためにお金を作ってくれたことを。今でも感謝してもしきれない気持ちでいっぱいです。

 

 父ちゃんの思いが、今、私たちの子供たちに受け継がれていることを報告できて嬉しく思います。父ちゃんは典型的な日本のお父さんだったから、私に多くは語りませんでしたね。でもきっと、子供たちがムンバイのアメリカンスクールに行っていることを知って喜び、誇りに思ってくれているでしょう。これからも私たちのことを見守っていて下さいね。

 

                         2016年11月

                                    生子

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